はじめまして。
 柿の木が数百年の樹齢を重ね古木になると、希に心材に墨で書いた様に黒い紋様が入るものがあります。この様になった柿の木のことを黒柿と言います。 千三百年の昔より、黒柿(くろがき)は貴重な宝物として大切にされてきました。当時、黒柿は権力者や富裕者だけの物で民衆の人々には目にふれることも無かったでしょう。黒柿の魅力は、目で味わい、じかに触れてこそ解かってくるもので言葉などで言いつたえられることは困難だったと思います。少しでも黒柿の奥の深い魅力を感じて頂ける方が増えれば、一黒柿愛好家として、この上ない喜びと思い当ホームページを作りました。このホームページでご共感頂けた方は是非「ギャラリー黒柿」にお越頂き本物の黒柿に触れて頂ければ幸いです。

黒柿は神秘の銘木 黒柿にまつわる逸話 黒柿と日本文化
黒柿の美 感性に共鳴する黒柿 奇跡の出会い
黒柿の稀少性 深遠なる黒柿の世界  

黒柿の柄模様は、元は同じ柿の木かと思うほど形や濃淡、色調が変容します。基本型とも言えるものは、真黒、縞杢、孔雀杢ですが、実際には基本杢がバリエーション化したり、杢の組合わせ柄となったりする紋様もあります。このように紋様は様々で、自然界の造形の美しさに感動させられてしまいます。黒柿が出易い地域の柿の木千本の中より1本しか出ないと言われ、驚くほど希少です。渋柿、甘柿いずれからも出るようですが、なぜ黒柿になるのかは、よく分かっていません。同じ所で、同条件で育った物が全く違った物になる。現状では科学的な根拠もなく、自然界の神秘となっています。黒柿は日本固有という訳ではなく、外国でも産出しています。柿の木の原種は東南アジアと言われ中国を経て日本の柿の木になった、という説が有力です。幕末期黒船が日本より持ち出した柿の木が米国や地中海地方などにも広がっていったようです。国産と比べると見た目は似ていますが模様、色調などが異なり雰囲気の違いがあります。一般的に黒柿と呼ぶ物は国産で、外国の物は産国名を付記し区別されています。ギャラリー黒柿は和文化と黒柿の係わりにこだわった展示ですので国産黒柿だけの取扱いとさせていただいております。

大きな柿の木や古木になれば黒柿になっている、と思えそうですがそうではありません。いくつかの条件が揃っていなければならないのです。土壌が火山灰を含み、冬は雪が積る地が適した所と言われ、東北、信州、山陰地方で時々見つかっています。もう少し突きつめた話しをすると、雀たちが生活しているところ、すなわち人が住んでいる近くにある柿の木が黒柿になるのです。柿の木はひ弱で成長が遅く、数百年の古木であっても幹径は1mにもなれません。野生林の中では他木の成長にかなわず生きていけない木と言えます。しかし人にとって有益な実を毎年多くつけることから大切にされ、田畑添い、山のふもと、敷地の中など人との共存共栄で生きていく道が残されました。余談ですが、ロマンチックな実際あったお話を少し。ある農村の代々庄屋さんだった敷地でおつとめを終えた樹齢800年の柿の木がありました。ご先代から18代目ご子孫までの人達と一緒に生き続けその家の一部始終を見てきたその木は黒柿になっていましたが持主はそのまま守り続けてきたのです。柿の木は寿命が尽きてしまい惜しまれましたがやむなく切られる事になりました。もしこの木に人のような思いがあるならば、家族のような家の人々と共に生きて数々の思い出のあるふるさとから離れたくない気持ちだったでしょう。願いはせめて黒柿となっていつまでも人と係わっていきたいということだったかもしれません。処分を任された工芸師さんは持主の思いと木の願いを感じ取り、その材を仏具にして家宝にと庄屋さんの家に納めました。黒柿を身近におくと幸福を招くと言われます。黒柿の不思議さはこのように人と柿の木の係わりから生まれているのかもしれません

 

6世紀の仏教伝来と共に、日本人は西方、中国の文化を吸収してきました。正倉院にある黒柿で作られた宝物の数々は約1300年前すでに黒柿工芸が存在したことを証明しています。仏教も定着して平安京へ移るころには、人々は神仏や自然への敬意を高め、美しい快適な環境で生活したいとの願望を独自の文化で実現しようとしはじめました。日本には四季があり様々に変化する自然美があふれています。豊かな感性と技巧力を持っていた日本人は自然を学びその恵みを巧みに生活に活かしながら、その英知を尊重し後世へと伝えてきました。黒柿の文化は作り手の伝統として引き継がれたと思われますが、茶道によって活性化されたようです。大名、上級武士、豪商の茶人達に屋敷の銘木材、茶道具材として愛好されました。当時の黒柿工芸品が文化遺産として今も各所で見ることができます。黒柿も含めて和文化は日本人が長い間求め続けてきた日本の風土、日本人の個性に合った生活の姿といえましょう。近年は新しい物を追及していくあまり欧米文化追従の姿に変わってしまいました。和文化には、先人達の素晴しい英知の数々が伝えられており、私達はもう少し和文化についての見識を見直していくべきと思います。黒柿は和文化をより理解したい人にとって道案内となってくれることでしょう。

黒柿の紋様は目立たない様でありながらも、その異質な感じから人の目を引くところがあります。作品が小さな物であっても黒柿自体の存在は見失われることはありません。このいぶし銀の様な持ち味が黒柿の大きな魅力のひとつと言えるでしょう。小さな黒柿の板に飾り物をのせ、へやに置いたとしましょう。飾り物がどんなに高級な物であっても黒柿は自己の品格を保ち飾り物に負けてしまうことはありません。逆に質素な物でも黒柿自体が目立ち、相手の影を薄めてしまうこともありません。黒柿は相手とうまく調和し、お互いの良さを引きだしながら美の相乗効果を創り出すのです。また黒柿はへやの雰囲気とも調和します。自分がかなめとなりへや全体を整然とした感じにまとめることができるのです。そしてへやの品位を高め、静かな落ちついた雰囲気を創り出してきます。黒柿がある独特の空間の中で、見事な黒柿の紋様を味わい楽しむ。ギャラリー黒柿でぜひ味わってみて下さい。

 

黒柿の美と言えば、神秘とも言える見事な紋様の美しさのことでしょう。人は他木には見られない独特な紋様になぜか心を引かれてしまうのです。黒色が主体の作品は荘厳さと最高の品格を持ち、茶色が主体となると、ほど良い上品さと親近感を思わせてくれます。那智黒の様な黒と胡粉の様な白のコントラストはモダンさを表現してきます。紋様は黒または茶のモノトーンですが、オレンジ色やエメラルドグリーン色が混ったり、グラデーションになったりして同じ物は絶対と言っていいほどないでしょう。黒柿はモノトーンですから美しい、きれいといった言葉は少し無理のある使い方で、むしろ素晴しいとか見事と言う表現の方があっているかもしれません。例えて説明すると、カラフルな熱帯魚は普通見た瞬間、美しいと言うでしょう。ではモノトーンの黒鯛やヒラメ、アイナメを見た時はどうでしょうか。美しい魚だとはきっと言わないでしょう。でも心の中でなぜか美しいと思う人もいるはずです。色や形で強く視覚にうったえてくる美に対し、じんわり心の中で形成されていく美もあるのです。黒柿の美は後者が主体になりますので、評価や感想は人によって異なり、同じ人でも鑑賞の度に違った感じに見えたりすることもあります。黒柿を見ていると、心の中にしまわれていた印象的な美しさや感動の想い出を追憶して作品に浮かばせていることがあります。現実から開放され心が和んでいる最高のひとときと言えましょう。

黒柿には天与の妙とも思える図柄や造形、自然風景の様な杢が出ることもあり、黒柿の不思議さを感じさせます。
   
皆様には何に見えるでしょうか、私には「招き猫」「飛翔する鷹」「観音様」に見えますがあえて本項は多くは語りません。

はじめて黒柿の作品と出逢った時、なぜこの様な高い値札がついているのか疑問を持たれたと思います。黒柿の他木との違いを挙げると、黒柿が希にしか見つからず、市に出ると品薄で高いセリ値となる。原木は小さく、製材すると、柄が消えたり割れや歪みが出て少ない材しか取れない。柄が不均一な為、柄取り、柄合わせが必要となり、さらに材料は小さくなっていく。簡単に言えば、高い材料代を支払っても小さな作品しかできないから高価になるのです。もう黒柿は丸太で買うのはやめたといわれる材木屋さんの声を何度か耳にしました。確かに高い値でセリ落としても板材すらまともに取れない事もよくあるのです。これほどの材木屋さん、工芸師さん泣かせの木だからこそ、その苦労価値が付加され逸品になる訳で昔も今もお宝的存在になっているのです。年々黒柿の原木は出物が減ってきているそうです。高級指向に傾く人も増えつつあり都会ではひそかな黒柿の愛好ブームが広がり始めました。かつて昭和のゴルフブームでウッド材に使われた黒柿は激減した経緯があり、まだその後遺症は残ったままなのです。数百年の年数を必要とする黒柿にとって、大量需要はとても応じられるものではなく、いつかは幻の木となってしまうのかもしれません。
孔雀の羽を思わせる孔雀杢は黒柿の中でも希少で高価。柿の木数十万本に1本しか出ないと言われる物です。孔雀杢は部分的にしか出ないことが多く床柱の様な10尺以上も続いて出る物は超希少です。他木と同じ様に模様の形で呼ばれる杢もあります。網杢は孔雀杢が角度違いで切られた場合に網目模様となったものです。黒柿のこぶ杢は孔雀杢以上に珍しく滅多にお目にかかれません。切り方の違いでぶどう杢にもなります。

黒柿は触ることと空拭きを繰り返すうちに、素晴しい光沢と心地よい手触り感が出てきます。昔の人は茶道具や印籠などの装身具でこの触感を楽しみました。これは、黒柿が普通の柿の木とは異なる物に変質している為です。白味の部分も変わらない様に見えますが同じ様に変質しており近年、ゴルフクラブのヘッド、高級な糸巻きの最高材として使用されたことでも分かります。いろいろ黒柿について述べさせていただきましたが言葉や文章では伝えにくいものです。ギャラリー黒柿では、いろいろな黒柿作品を展示しておりますので見て、触れて、ご自身の感性で味わっていただくことが一番かと思います。皆様のご来店を心よりお待ちいたしております。